です」
「たいへんな遠方でもよろしい。生命のあるかぎり、いけるところまでいってみようじゃないか」
「はあ」
「なにかね、そのムーア彗星は、これからのち、もっと地球に近くならないのかね」
「え?」
 このとき、緑川博士は、すいぶん大きな声をだした。よほどおどろいたのである。博士の顔は、たちまち赤くなった。なぜ?
(ああ、そうだった。自分としたことが、なんという間ぬけだったろう!)
 博士は、われとわが頭を、拳でもって、ごつんと殴《なぐ》ったのであった。
「こら待て、いくら自分の頭だからといって、そうらんぼうに殴るとはいかん……」
「いや、大竹閣下。自分は、今閣下からいわれるまで実はたいへんなことを忘れていました」
「たいへんなことを忘れていた。それは何か。いってみなさい、それを」
「いや、外でもありません。そのムーア彗星が、やがてどのへんまで地球に近づくか、その計算をまだしてなかったのです」
「ふーん」
「そうだ。何ヶ月か何年か待てば、ムーア彗星は今よりもっと地球に近くなるかもしれない」
「そのとき、こっちから出かけていけばいいではないか」
「そうでした。閣下におっしゃられて、はじめて気
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