目の前にとんでいるのに、ざんねんながら手がとどかないのと同じようだ。大宇宙の大きさにくらべて、人間の力のあまりにも小さいことよと、博士はがっかりしたのであった。
博士が、がっかりしたまま、ムビウムのことを忘れてしまえば、それで何もかもおしまいであった。ところが、神のおたすけがあったというのでもあろうか、或る日緑川博士は、或る会合で、例の隻脚隻腕の猛将大竹中将の席のとなりに座ったのである。そのとき、ふとムビウムやムーア彗星のことについて口をすべらしたところ、これを耳にした中将は、
「うわーっ、そいつはおもしろい大事業だ。しかも国家的の大事業じゃないか。君、若いくせに、そんなにひかんすることはない。わしにも、すこしは考えがあるよ。どうだ、今夜これからわしの家へ来なさらんか。そして二人で、よく話をしてみようじゃないか」
と、思いがけないことばであった。
緑川博士は、大竹中将からこのはげましのことばをもらって、たいへんうれしかった。しかしいくら中将の考えでも、このことばかりはどうにもなるまいと思った。なにしろ、ここから何億キロメートルの何億倍というほどの、はるかの天空を走っているムーア彗
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