ひろくなり、それがなお近づいて、ますますひろくなった。やがてそれは、洪水のようにひろがり、噴行艇のま下まで明るくなった。とたんに、魚雷のような形をした噴行艇の影が、くっきりと、月面のうえに落ちて、山脈も岩の平原も、流れるようにずんずんと後へ走っていった。
「着陸用意! 重力装置を反対にしずかに廻せ!」
 艇長の号令が、無電にのって出た。
 電力装置が、反対に廻りだした。すると、噴行艇の落下速度が喰いとめられた。艇はだんだん高度を下げていきながら、もりあがってくる月面の上に、ふわりと降りた。まるで蒲団《ふとん》のうえに落ちたかのように、しずかに着陸したのであった。ごとんと、たった一回だけ艇はゆれただけでじつに見事な着陸ぶりであった。
 噴行艇は、笑いの海に、巨体をよこたえたのであった。


   上陸第一歩


 笑いの海に着陸すると、艇員たちは、俄《にわか》にいそがしくなった。
 号令は、無電をもって、矢《や》つぎ早《ばや》につたえられた。
 重い扉が、内側にむかって開かれた。すると、中からはしご[#「はしご」に傍点]が下ろされた。
「艇長、下艇の用意ができました」
「よろしい。わしが
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