これは、人間の声に応じて、機械的に震動するようになっている。つまり私がこの兜をかぶり、兜の中でものをいうと――兜の中には空気があるから、声は出ます――すると、その声が、この触角を震動させるのである。つまり、声は空気の震動であるが、触角に伝わって、機械的な震動となって、ぶるぶるぴゅんぴゅんとふるえる。そこで私の触角と、話をしようと思う相手の人の触角とを触れさせておくと、私のいったことばは、例の震動となり、私の触角から相手の触角へ震動が伝わる。その結果、相手の耳のところにつけてある震動板――つまり高声器のようなものさ――が震動して、音を発するのだ。その音というのは、つまり私のことばであります。どうです、わかりますか」
すばらしい性能
つまりつまりを連発して、説明者は汗だくだくの説明をこころみた。
三郎には、くわしいことがのみこめなかったが、よく蟻《あり》同志が話をするとき、触角をぴくぴくうごかして、たがいに触角をふれあわせているのを見たことを思い出した。蟻は、口がきけない代りに、触角をふれあわせて、ことばを相手に通じるのであろうと思っていたが、それに似たことを、いま人間で
前へ
次へ
全115ページ中41ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング