わてたらしいね」
そういいながら、艇長は卓子《テーブル》のところへひきかえしてきたが、とたんに大きなこえでどなった。
「なあんだ。コーヒーは、みんな茶碗の外にこぼれてしまったじゃないか。艇夫、こんど、わしが戻ってきたら、そのときはすぐコーヒーをのませるんだぞ」
「へーい。どうもお気の毒さまで……」
「わしは今日、コーヒーにたたられているようじゃ」
艇長は、朗《ほがら》かなこえをのこして、室外へとびだしていった。
震動は、いいあんばいに、ようやくとまったようである。
三郎は、雑巾《ぞうきん》で卓子のうえをふきながら、
「はて、宇宙塵とは、どんなものだろうねえ」
と、ふしぎそうに、首をかしげて、卓子のうえの同じところをいくどもふいている。
そのころ、廊下が、いやにさわがしくなった。大ぜいが、靴音もあらあらしく、かけていく様子である。
三郎は、不安な気持になって、出入口の外に顔を出した。
「おう、鳥原さん。なんです。このさわぎは……」
ちょうど幸いに、三郎は、日頃兄のように尊敬している艇夫の鳥原青年が通りかかったのでいそいでこえをかけた。
「やあ、風間の三《さ》ぶちゃんか」
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