ろい丸窓から、人間の顔が一つずつのぞいたとしても、百人の人間が、艇内にいるわけだ。なんという大きな噴行艇であろうか。
 しかし、噴行艇には、百人よりも、もっとたくさんの人間がのりこんでいた。
 これから、わたくしがお話しようと思う噴行艇アシビキ号には、二百三十人の日本人がのっている。みんな日本人ばかりであった。
 いや、日本人がのっているのは、このアシビキ号だけではない。今、この大宇宙を、大きな一かたまりになってとんでいる噴行艇の、どの艇にも、日本人がのっていた。いや、もっとはっきりいうと、全部で、百七十の噴行艇の乗組員は、ことごとく日本人でしめられていたのである。
 この噴行艇群は、一体どこへ向けてとんでいるのであろうか。また何の目的で、このような大宇宙へとびだしたのであろうか。総員四万余名もの日本人が、なぜ一かたまりになって、とんでいるのであろうか。読者諸君はふしぎに思われるであろうが、全くのところ、今から五十年前の人間には、想像がつかないのも無理ではない。
 では、作者は、噴行艇アシビキ号の中にのりくんでいる一人の少年風間三郎《かざまさぶろう》の身のまわりから描写の筆をおこすこと
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