さあ、では君もつかれたろう。今、何かうまいものでも作らせるから――」
辻中佐がいうと、火星人は、
「いや駄目です」
「駄目とはなんだ、折角親切にいって下さるのに」
幕僚が、眼をむいた。
「いや、そういうわけではありません、われわれ火星人は物を食べる、ということを忘れてしまったのです」
「ナニ、何だって?」
「われわれ火星人も祖先の時代にはやはり物を食べたのです。しかし、物を食べるのは口で噛んだり、胃や腸を使ったりして、滋養分を血の中に吸収させ、その血が身体中を廻って持っている養分を身体に補給することでしょう。われわれにはもう胃や腸が退化して無くなってしまったといってもいいのです。われわれはもう充分によく消化されたような『食物』を口からではなく直接血管の中に注ぎ込んで生きているんです」
「ふーむ、すると病人が葡萄糖《ぶどうとう》の注射をするようなものだな」
辻艇長がうなずいた。この話を、風間や木曾に聞かせたら、成程《なるほど》、といって、あの妙な缶詰と、それからそれを彼らが口ではなく、頭のあたりにのせて空にしていたわけを思い出したに違いない。
「だが、君たちは高等生物に似合わぬ恰好
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