――檣《マスト》が折れて空中に舞い上る。煙突が半分ばかり、どこかへ吹きとばされる。何だか真黒い木片だか鉄板だか知れないものが、無数に空中をヒラヒラ飛んでいる。
「作戦は図に当ったぞッ」
 艦長は叫びました、×艦隊は清川大尉の第八潜水艦を見付けて、夢中になって追跡したのです。まさか他の四隻の潜水艦が隠れているとは露知らず、遂にうまうま計略に載せられて、僚艦四隻の待ちかまえていた魚雷のねらいの中へ、ひっぱりこまれたのでした。
 大きいといっても二等駆逐艦です。ドンドン傾いてゆきます。×兵は吾勝ちに海中へ飛びこんでいます。
「万歳!」
「潜水戦隊、万歳!」
 海面を圧して、どっと喜びの声があがりました。


   無念の手傷
   取残された第八潜水艦


 初陣に、×の哨戒艦二隻を撃沈して、凱歌《がいか》をあげたわが第十三潜水戦隊は、直に隊形を整えて、前進をつづけようといたしました。ところが、ここに大変困ったことが起りました。
 それは一番の手柄をたてた第八潜水艦の出入口の蓋が、敵弾に壊されたことです。これがしっかり閉じられないと、潜水することは出来ません。
 これには清川艦長は勿論のこと
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