に傍線]ト、パナマ[#「パナマ」に傍線]運河トヲ結ブ海面附近ニ出動シ、途中ニオイテコレヲ撃滅スベシ。終」
非常に重大なる任務でした。間もなく日×両軍の主力艦隊が決戦しようという時、この大商船隊がハワイにつけば、×艦隊は岩をふまえた虎のように強くなるでしょう。又その反対に、この大商船隊を撃滅出来れば、わが連合艦隊の作戦は大分楽になります。随《したが》って、この大商船隊を葬るか、それともその商船隊を護《まも》る×の艦隊にこっちが撃退されるかによって、両軍決戦の勝敗がどっちかへハッキリきまることになるのです。
清川艦長はこのことを一通り部下に説明したのち、一段声を励ましていいました。
「大元帥陛下の御命令により、只今からわが第十三潜水戦隊は、この名誉ある任務を果そうとするのだ。――総員、直に配置につけッ」
一同はもう一度、万歳を唱えたいのを我慢して、サッと挙手の敬礼をして忠勇を誓いました。誰の顔にも、見る見るうちに、盆と正月とが一緒に来たような喜色がハッキリと浮かび上りました。操舵手は舵機のところへ、魚雷射手は発射管のところへ、飛んでゆきました。
×の駆逐艦に見つかる 八門の
大砲にねらわれての大離れわざ
勇《いさ》みに勇む第十三潜水戦隊は、その日から船脚《ふなあし》に鞭うって、東南東の海面へ進撃してゆきました、いよいよ×国は近くなる一方です。
それは宣戦布告を聞いてから、丁度六日目にあたる日の昼下《ひるさが》りのことでありました。第八潜水艦の司令塔は、にわかに活溌になってきました。
「どうも哨戒艦(見張の軍艦)らしいな」と清川艦長が叫びました。
「まだ向うは気がついていないようですね」
先任将校は双眼鏡から眼を離して、いいました。
「艦長どの、旗艦から報告です。『正面水平線上ニ×国二等駆逐艦二隻現ル』」伝令です。
「よし、御苦労」
行く手にあたって、高くあがった微《かす》かな煤煙は、だんだんと大きくなって来ます。よく見ると、成程《なるほど》それは×の二等駆逐艦が二隻並んでこちらへ進んで来ているのです。潜水艦の二倍もの快速力で走り、そして優勢な大砲を積んでいるという、潜水艦にとっては中々の苦手、その駆逐艦が、しかも二隻です。
だから、この場合潜水戦隊としては、出来るだけ姿を見せずに逃げだすのが普通なのです。
「艦長どの。司令官閣下から、
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