、悲鳴をあげながら、床の上にうつむけになってころがると、両肩を波のようにうごかして、くるしそうな息をついているのであった。いかにも重病でくるしんでいるらしい。
 クイクイの神になりすましている漁夫三浦須美吉は、その様子をじっと見ていたが、やがて両手でもって、女の顔をぐっと正面にむけた。
 女は、これからクイクイの神に何をされるのかと、あまりのおそろしさに、手足をぶるぶるふるわせている。


   へんてこ医術


 クイクイの神は、一座をずっとみわたし、いよいよ神の力をもってこの女の病気をなおしてみせるぞという合図をした。
 ミンミン島の原地人たちの口からは、クイクイの神をたたえるような言葉がつぶやかれた。
 そこでクイクイの神は、原地人の女の顔を見つめながら、両腕を前にぬっとつきだした。次に両腕を、ぽんぽんとたたいて、なんのかわりもないことをしめした。それから両腕をさかんにふりまわしたり、両手をにぎったりはなしたりしていたが、そのうちに右手の指さきを、かたくにぎった左の掌《てのひら》の中にさしいれて、ごそごそやっていたかと思うと、左の掌の中から、赤い紐のようなものをするするとひっぱり
前へ 次へ
全194ページ中86ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング