、永久に来ないかもしれない。そして、おそらくこれが、最初にして最後の報告になるかもしれない。――太刀川青年は、そんなことを考えながら、ステッキの頭についている蓋をはずすと、内部につめこまれた精巧な超小型の無電機をのぞいた。くわしいことは、軍機の秘密だから、のべられないけれど、機械のどの部分も、ゴムに似たある特別の弾力のあるかたい物でかためてある。なげとばそうと、海水につかろうと、また少しぐらい熱しようと、中にある機械の働きは、少しもくるわないというすばらしいものだ。
 太刀川青年は、ステッキの中から、紐のついた南京豆ほどの奇妙な受話器をひっぱりだし、耳の穴に入れた。そして右の指先で、小さな無電の電鍵《キイ》を、こつこつとたたいた。
「X二〇三、X二〇三」
 それは、例のよびだし符合であった。
 太刀川は、そのよびだし符合を、十四ほど、つづけざまにうった。
 それがすむと、電鍵《キイ》のそばについているスイッチをきりかえた。それは、機械が、以後電話ではたらくように、なおしたのだった。
 じ、じっと雑音が、受話器をならした。するとそれにつづいて、日本語がはいってきた。
「太刀川君かね。こち
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