ートル、百メートルと、見る見るうちに下って行った。
 あらしの名残の雲がきれぎれにとぶ。
 西を向いても東を向いても果しのない大海原、もうどうすることもできない。艇内百余の人命をあずかっているダン艇長は、心を痛めながら、着水後の用意のため、艇内を見まわっている時であった。
「あ、あれあれ」
 と、とんきょうな叫声がおこった。
 何事かと窓によってみると、海上に大海魔の姿はなく、ごーっという、すさまじい海鳴とともに、今まで大海魔ののぞいていた海面は、ごぼんごぼんと大きな泡をたて、渦をまいてわきたっているではないか。


   約束の無電


 ダン艇長が、大海魔の消えた海面に目をみはっているそばで、太刀川時夫は、しきりにステッキの頭をひねくっていた。ステッキというが、これはただのステッキではない。日本を出発するとき、原大佐から、「万一の時には、この中に仕掛けてある短波無線機で知らせよ。よびだし符合はX二〇三――」だといっておくられた、あのステッキだ。
 それを使う時がいよいよ来たのだ。まさかと思った大海魔が、目の前にあらわれたのである。今だ今だ。今この報告をしなければ、ステッキを使う時が
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