「ぎゃ!」という妙な声、
「おや!」と頭をもたげた時には、今の今まで前にいたリーロフの姿が見えない。
 太刀川は、びっくりして下を見た。
「あ、あれは?」
 艇の下方で、リーロフが綱のはし[#「はし」に傍点]につかまって、ブランコのように大きくゆれているのを見た。リーロフは、もとの位置にはねかえった方向舵にはじかれて、艇の胴体からすべり落ちたのだ。だがもう一つおどろいたことがあった。リーロフの胴をゆわえていたはずの綱がとけて、彼はわずかに、そのはしをにぎっているのであった。
「あ、あぶない!」
 と、太刀川がさけんだ時は、もうおそかった。リーロフが、力つきて綱をはなしたのだ。あやつり人形のように手足をばたばたうごかして、下に落ちてゆくリーロフ! その顔が赤ペンキをぶっかけたように見えたのは、方向舵にはねられた時にけがをしたのでもあろうか。リーロフの体は、みるみるうずまく黒雲の中にすいこまれてしまった。
 ああ、リーロフは落ち、そして方向舵はもとにかえったが、太刀川青年は一たいどうなるのだろう。


   心配なガソリン


 どうしてきたかわからないが、とにかく太刀川青年は、胴体をは
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