ですか。この私が……」
 太刀川はおどろいて聞きかえした。
「いや、まだそれは化物ときまったわけではない。化物かどうかを、君にいって調べてもらいたいのだ。わが海軍としては、太平洋の護《まもり》は大切このうえもない。そこへ化物が出てくるというのでは、困るのだ。とにかく、化物であるかないかを、われわれは一刻もはやく知りたいのだ。部内から軍人などをえらんで向こうへやると、列強のスパイにすぐ気《け》どられてしまう。だが[#「だが」はママ]君のように、こっちと従来関係のなかった人をえらんで、現場へおくりたいのだ。それには君が一番適任だとおもう。御苦労だが一つひきうけて、海魔の正体を調べてきてくれ」
 太刀川は大佐の言葉をじっと聞いていたが、やはり駄目だという風にかぶりをふり、
「私はお断りいたします。化物探検などというそんな架空な、そして不真面目《ふまじめ》なことをやるのはいやです」
 青年は、きっぱりと大佐の頼みを断った。
 原大佐は、それを聞いて、怒るか、それとも失望するかと思いのほか、いよいよ満足らしい笑をうかべて、
「ほう、なかなか強硬だな。君のその真面目な性格を見こんでいればこそ、あえ
前へ 次へ
全194ページ中7ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング