たなどとは、本当のことだと信じられるだろうか。これでは、まるで昔のお伽噺《とぎばなし》に出てくるような大海蛇そっくりである。この科学のさかんな世に、誰がそんなばかばかしい海魔を信ずることができるだろうか。新しい海の学問をおさめた太刀川時夫には、ほらばなしとしかうけとれなかった。
「これはいたずらずきの者が書いた人さわがせの手紙ではないのでしょうか」
太刀川は、思っているままを、原大佐にいった。大佐は、首をかるく左右にふって、
「ところが、そうも考えられないのだ。第一それを書いた第九平磯丸という船は、たしかに船籍簿にのっているし、船の持主のところへいって調べると、たしかに漁にでているとのことだった。また三浦須美吉という漁夫もたしかに乗りこんでいったそうで、このへんのことは、実際とよくあうのだ。するとこの手紙は本当のようにおもう」
「原大佐は、そんな魔物が、太平洋に棲んでいるとおもわれるのですか」
「だから君を呼んだのだ」
と原大佐は、きっぱりいった。
「私をお呼びになって、それでどうなさるおつもりなんですか」
「ひとつ君にくわしく調べてきてもらおうと思うのだ」
「化物《ばけもの》探検
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