、太刀川青年に見ならって、麻綱を胴中にぐるぐるとまきつけた。
大冒険!
このままほうっておけば、艇は墜落するよりほかないのだが、それにしても、諸君、太刀川青年はすこし、やりすぎたのではないだろうか。この暴風雨中に、艇外へ出て、方向舵をなおすなんて、人間わざでできることではない。日本をはなれるとき、原大佐から重大使命をさずけられた身として、かるはずみのしわざ[#「しわざ」に傍点]ではあるまいか。
いや諸君、太刀川青年は、けっしてその重大使命をわすれるような男ではない。いや、これを思えばこそ、ケレンコ事件がおこってからこっち、ひそかに計画をすすめていたのだ。
その重大使命をはたすために、彼は、にくむべきケレンコとリーロフの国際魔二人を、死なせてはならないと思っていたのだ。
なぜ? その答は、太刀川青年の胸のなかにある。今はただ謎として、これだけを承知しておけばよいのだ。
それはともかく、太刀川のたてた計画は、順序正しく、はこびつつあった。
操縦室の停電も、それであった。
そして停電のすぐ後に、猿のようなものが、しのびこみ、ケレンコにちかづき、何事かしてまた出てい
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