。われわれも死ぬが、あなたがたも一しょに死ぬのですよ」
太刀川青年は、ここぞとばかり言った。
「なに、死ぬ?」
ケレンコが、ひくい声でつぶやいた。さすがのケレンコもこれには、完全にまいったらしい。
「じゃ、太刀川君。どうすればよいのだね」
ついにケレンコは一歩ゆずった。太刀川青年の言葉は、敵の荒肝《あらぎも》をひしいだ。
「それは考えるまでもないじゃありませんか。あの曲った方向舵をなおすことですよ!」
と太刀川は、こともなげに言った。
「な、なんだと、太刀川君」
ケレンコはおどろいた。
「あの方向舵の故障は艇内でなおすわけにはいかない。しかし、この暴風雨の艇外に出て、そんなはなれわざ[#「はなれわざ」に傍点]が、できるものじゃない」
「ケレンコさん、それをやるのです。やらなければ、われわれは死ぬよりほかないのですよ。二人でやればできないこともないと思います。僕とあなたで、早いところやろうではありませんか」
「え、君とわがはいとで……」
鬼のようなケレンコも、この一言には、まるで串ざしにされたかたちだった。
太刀川青年は、艇長の方をふりむいて、
「さあ、ダン艇長、早く麻綱を
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