たちは、てんでに勝手なことをいって、さわぎだした。
「さあ、早く歩け」
密航少年
と、隊長の艇員は叱りつける。と突然、
「やかましいやい」
とリキーが座席から立ち上って、どなった。
「密航少年の一人ぐらいで、なんというさわぎをやってるんだ。俺がかわって片づけてやらあ。さあ、その小僧をこっちへよこせ」
リキーは、松の木のような太い腕をのばして、少年をぐいとつかんだ。
「ああ、ちょっとお待ちください。この少年の処分は、ダン艇長がいたしますから、どうかおかまいなく」
艇員の隊長は、腕節のつよそうなリキーに遠慮がちに、それでもいうだけのことをいった。
「おれはさっきから、頭がいたくてたまらないんだ。貴様がこの小僧をぴいぴい泣かせるものだから、頭痛がいよいよはげしくなってきたじゃないか。なあに、こいつを片づけるくらい、訳のないことだ。窓から外へおっぽりだせば、それですむじゃないか」
リキーは、たいへんなことを、平気でいった。そしてそれをすぐにもやりそうであった。
乗合わせている婦人たちは、さっと顔色をまっ青にした。
「まあ、ちょっとお待ちください。いま艇長に話をいたしま
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