た。ではすぐ艇内をさがす捜索隊の顔ぶれをきめましょう」
「うん、うまくやってくれ」
その後は、声が急に低くなって、聞きとれなかった。
それから十五分ほどすると、捜索隊の顔ぶれがきまったのか、事務長が艇内の方々へ電話をかけはじめた。
秘密のうちに共産党員にたいし、戦いの火蓋が切られたのである。
当のケレンコとリーロフが、知っているかどうか知る由もないが、艇内はにわかに、重苦しい空気につつまれて行った。
太刀川時夫は、座席にふかく体をうずめたまま、じっとこらえていた。
(怪しい奴といえば、あの向こうの隅に睡りこけているケント老夫人と、酔っぱらいのリキーの二人組だが……)
太刀川は、どういうものか、二人組が気になって仕方がなかった。
(しかし待てよ。共産党員のケレンコとリーロフというのは、どっちも男だ。ところがあの二人は、一人は荒くれ男だけれども、もう一人の方はお婆さんではないか。するとこれは、別人かな)
と思ったが、それでもなお、彼はこの二人組から、目を放す気持にはなれなかった。
その時であった。
とつぜん防音扉が、ばたんとあいてどやどやと捜索隊がはいってきた。
(すわこ
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