きびと号令をかけるのだった。
「ほら、むこうに大きな古錨がある。あのくろい岩のかげだ。あの古錨に、こいつをくくりつけておけ。いまに海坊主のえじきになるだろう!」
なにかこう、らんぼうな、むごたらしい言葉をつかわないと、感じがでないので、リーロフのまねをするのも、らくではなかった。
「海坊主て、なんですか」
水兵の一人が、ききかえした。
「海坊主を、貴様たちは、知らないのか」と太刀川はわざと肩をそびやかしたが、考えてみると海坊主なんてものは、日本の話にだけあるおばけ[#「おばけ」に傍点]らしい。
「海坊主とは、海にいる幽霊のことだ」
「海にいる幽霊、ははあ、吸血鬼のことですか。かねてうちの母から、海中にはおそろしい吸血鬼がすんでいると聞いていましたが、な、なーるほど」
と、水兵はほんとうにして、にわかにがたがたふるえながら、前後左右を見まわしたのであった。
リーロフにばけて
「さあ、そいつのしまつができたら、さっきの命令どおりに、はやく商船の中にはいりこんで、積荷をとりだすんだ。はやくやらないと、吸血鬼が、船の中のものを食いにやってくる。それとぶつかってもおれは知らな
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