ェルズなる人造人間を作るが、これが世にもまことに麗《うるわ》しい妙齢の婦人の相貌を備え、しかも機械力で二十人力の腕力があり、要所要所に六個の耳を備えて居り、時速六十|哩《マイル》の快速力で、駈け出すことができるという鬼神《きじん》のお松そっちのけの人造人間である。
 このメリー・ウェルズを助手のピーターが操縦盤と一緒に盗み出し、強盗殺人をやらせるが、その働きは実に非凡である。大きなビルディングの下に立っていると思うと、スルスルと身長が伸びて、何十階の上の高窓に手が届いたり、警官隊や、その機関銃を撃退するところは、何とも恐ろしい光景である。これは「無線電話と無線鏡」をつかってこしらえあげた人間だそうであるが、今日の言葉で申せば、「ラジオとテレヴィジョン」仕掛けなのである。その空想は、実に今日実在する人造人間の構造そのものを言いあてていられるところ、まことに驚歎すべきものである。この厄介な怖るべき電波嬢は、博士の手にその操縦盤が帰ったため、反《かえ》って博士の手によって行動することとなり、助手のピーターを逆に取押さえるところで物語は了《おわ》っている。その電波嬢は、あとで解体せられ、スプリ
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