ます。はーい」
懸《か》け声と共に、第二のスイッチは入った。
すると、一万台の人造人間戦車は、とたんに、ぶるんと一揺れ揺れた。と、たちまちものすごい勢いで、がらがらがらと疾走《しっそう》を始めた。但《ただ》し原地人軍の方へ向って前進しないで、何を勘《かん》ちがいしたか、あべこべに、醤軍の方へ向けて、全速力で後退を始めたではないか。
呀《あ》っ!
それは、ほんの一瞬間の出来事――いや、悪夢であったように思われる。一万台の人造人間戦車は、電撃の如く、呀っという間に、醤主席をはじめ全軍一兵のこらずを平等にその鋼鉄の車体の下に蹂躙し去り、それから尚《なお》も快速をつづけて、やがて、そこから三百キロ向うの海の中へ、さっとしぶきをあげて嵌《はま》りこんでしまった。
あまりに意外な勝戦《しょうせん》に、原地人軍の酋長は、それ以来、自分が神様の生れかわりであると信ずるようになったそうである。
一体、なにがこう間違ったのであるか。
これについて、後日《ごじつ》、わが金博士はこのことを伝え聞き、そしてしずかにいったことである。
「あいつは、大馬鹿者じゃよ。渦巻気流というものは、北半球と南半球
前へ
次へ
全23ページ中22ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング