ったように、手がたくやってもらいたいものじゃ」
醤主席は、かくも見事な重工業地帯を完成しても、その昔、英米《えいべい》から売りつけられた碌《ろく》に役にもたたない兵器に懲《こ》りた経験を思い出し、また重慶《じゅうけい》で、しばしば嘗《な》めた不渡手形的援醤宣言《ふわたりてがたてきえんしょうせんげん》の苦《に》が苦《に》がしさを想い出し、すべて手硬《てがた》い一方で押そうとするのであった。
しかし油学士は、反対であった。
「御心配は、御無用にねがいたい。天下に有名なるかの金博士の発明品に、作ってみて動かなかったり、組合わせてみて働かなかったり、そんなインチキなことがあろうはずはありません。現に、私が博士のところを辞しますときに、博士からこの人造人間戦車の模型を見せていただきましたが、実にうまく動きました。大したものでした」
「お前は、動かしてみたかね」
「はい。もちろん、上海《シャンハイ》では、やってみました。戦車を動かしますのは、渦巻気流式《うずまききりゅうしき》エンジンというもので、じつにすばらしいエンジンですな」
「渦巻気流式エンジンというと、どんなものじゃ」
「これは金博士の
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