よろこんだが、引続いてその配置や実行方法について詳細なる説明を語りつづけるのであった。
 そのとき、突然、首領の前に置かれた電話機が、けたたましく鳴りはじめた。首領は手をのばして受話機をとりあげた。電話の内容は、首領を驚かせるに充分だったと見えて、彼は右手で机をおさえ、辛うじて崩《くず》れ落《お》ちようとする全身をささえている様子だった。電話が終ると、首領は俄《にわ》かに厳粛《げんしゅく》な態度にかえって、団員一同を見渡すと、やがて静かに口を開いた。
「皆さん、今夜の決議事項は駄目になりました」首領の英語は常に似ず朗《ほがら》かさを失っていた。「亜細亜《アジア》製鉄所には既に暴動が起りました。製鉄所の建物は今猛火につつまれています。キューポラは爆発して熔鉄《ようてつ》が五百|米《メートル》四方にとび散ったということです。この暴動の群衆の中に、奇怪なる人造人間《ロボット》が多数|交《まじ》っていて、いずれも挺身《ていしん》、破壊《はかい》に従事したということです。次に命令です。失礼ながら皆さん、両手をあげていただきたい。おあげにならぬと、この私が銃丸《じゅうがん》をさしあげますぞ」一同は不意を喰って驚きはしたが、双手《そうしゅ》を直《す》ぐに挙げることには躊躇《ちゅうちょ》しなかった。それは首領の射撃の腕前を、この部屋でしばしば目撃したことがあるからである。
「さて諸君、もう一つのニュースをおしらせする。それは副首領の緑十八が、行方不明になったことである。緑十八は、先程から見まわすところ、この席上に出ていないようである。しかるに、ここに不思議なことがある。この会議にこうして出ている人数は、いつもの通りの十三人である。従って、ここには一人の珍客《ちんきゃく》がお出席になっていることと拝察する。皆さん、覆面《ふくめん》をとっていただきたい。その代り現倶楽部員は即刻、解任されたものと御承知願いたい」
 僕は躊躇《ちゅうちょ》なく覆面をかなぐり捨てた。それと同時にあちらこちらでも、覆面が脱ぎ取られ、その度に、意外な顔があらわれるのであった。だが唯一人、覆面をとらぬ団員があった。
「貴方《あなた》はどうしておとりにならない」
 最後の一人は、両手を頭上にうちふって哀願しているようだったが、隣の男が素早くすすみよると、するりと覆面の布《ぬの》をひきはいだ。
「呀《あ》ッ、人造人間
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