中に納まっている鋼鉄製の人造人間であった。それは人間より少し背が高く中世紀の騎士が、ふたまわりほど大きい甲冑《かっちゅう》を着たような恰好をしていて、なかなか立派なものであった。そして頤の張った顔を正面に向け、高い鼻をツンと前に伸ばし、その下に切り込んだ三日月形の口孔《こうこう》の奥には高声器が見え、それから円《つぶ》らな二つの眼は光電管でできていた。また両の耳は、昔|流行《はや》ったラジオのラッパのように顔の側面に取りつけられ、前を向いたラッパの口には黒い布《きれ》で覆いがしてあった。
人造人間に近づいて、しばらく見ていると、どこからともなくギリギリギリという低い音がしているのに気がついた。
「オヤ」
と思った帆村は、試みに人造人間の鋼鉄張《こうてつばり》の胸に、耳を押しつけてみた。すると愕いた事にヒヤリとするだろうと思った鉄板が生暖く、そしてその鉄板の向うにギリギリギリという何か小さい器械が廻っているらしい音を聞きとることができた。
「ほう、この人造人間は生きているぞ」
彼は目を瞠《みは》って、改めてこの人造人間を眺めなおした。そのとき彼は、実に愕くべき発見をしたのだった。
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