「呀《あ》ッ! 血だ、血だッ。人造人間の拳《こぶし》に、血が一杯ついている!」


     3


 帆村の愕きの声に、係官の一行は、函に入った人造人間の前にドヤドヤと集ってきた。
「ナニ血がついているって。おおこれはひどい」
「やあ、函の底にも、血痕が垂《た》れている。おう、ちょっと函の前を皆、どいたどいた」
 血痕と聞いて、一同、爪先《つまさき》だって左右にサッと分れた。
「ホラホラ。ここにもある、ウム、そこにもある。血痕がズーッと続いているぞ」
「なアんだ、寝台のところまで、血痕がつながっているじゃないか。すると、――」
「すると、この人造人間めが、博士を殺《や》ったことになる……のかなア」
「えッ、この人造人間が殺害犯人とは……」
 一同は慄然《りつぜん》としてその場に立ち竦《すく》み、この不気味な鋼鉄の怪物をこわごわ見やった。人造人間は、ピクリとも動かなかった。しかしまた、今にも一声ウオーッと怒号《どごう》して、函の中から躍り出しそうな気配にも見えた。
「皆さんはまさか、こんな鋼鉄機械が一人前の霊魂を持っていると決議なさるわけじゃありますまいネ」
 と、帆村が横合《よこあい
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