くろう》でも捕《とら》える演習しているのかネ」
「冗談じゃありませんよ。ここの主人が殺《や》られたんですよ」
「ほう、竹田博士殺害事件か。それにしてはいやに静かだねえ。国際連盟は押入から蒲団《ふとん》でもだして、お揃《そろ》いで一と寝入りやっているのかネ」
「じょ、冗談を……」
 といっているところへ、表に自動車のエンジンが高らかに響いて、帆村のいう所謂《いわゆる》国際連盟委員がドヤドヤと入ってきた。雁金《かりがね》検事、丘予審判事、大江山捜査課長、帯広《おびひろ》警部をはじめ多数の係官一行の顔がすっかり揃っていた。「お、帆村君、もう来ていたか。電話をかけたが、行方不明だということだったぞ」
 と、雁金検事が、彼の肩を叩いた。
「いや貴官がたが御存知ないうちに、うちの助手に殺人現場を教えとくのは失礼だと思いましてネ」
 と帆村は挨拶を返した。
「さあ、始めましょう」
 大江山課長は先登《せんとう》に立つと、家の中に入っていった。帆村も一番|殿《しんが》りからついていった。
 階段を二つのぼると、三階が博士の実験室になっていた。そこはだだっ広い三十坪ばかりの部屋だった。沢山の器械棚が壁ぎ
前へ 次へ
全34ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング