れてゆく背丈のたいへん違った男女の後を巧みに追っていった。二人は濠端《ほりばた》へ出たが、自動車にも会わず、そのままドンドン向うへ歩いていった。そして新富橋《しんとみばし》の上にさしかかったとき、女はハッとした様子で立ち停った。
 女は向うを指《ゆびさ》した。
「アラ、窓に灯がついているわ。誰もいない筈なのに」
 橋を越えて、濠添いに右へ取っていったところに、人造人間の研究で知られた竹田博士研究所が聳《そび》えている。女は明らかにその家の窓を指しているのだった。
 二人は急ぎ足となった。そして一度追い越した帆村を、また追い越しかえして、濠端を駛《はし》った。
 門前ちかくにまで進んだ二人だったけれど、何を見たのか俄《にわ》かに急いで引返してきた。帆村は面喰《めんくら》った。しかし本当に面喰ったのは二人の方らしかった。男は女を後にかばってツと濠端に身を引いた。外人の大きな挙《こぶし》が長いズボンの蔭にブルブルと呻《うな》っているのが判った。帆村はジロリと一瞥《いちべつ》したまま、平然と二人の前を通りすぎた。彼は後の方で、深い二つの吐息《といき》のするのを聞いた。
 帆村は構わず、竹田博士
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