。なんとこれは……」
といっているとき、――そのときだった。突然大きな声が、部屋中に鳴りひびいた。
「ええ、後場《ごば》の市況《しきょう》でございます。新鐘《しんかね》……」と、細い数字が高らかに読みあげられていった。それはラジオの経済市況に外《ほか》ならなかった。
「――君、ラジオの経済市況なんかで、寂しいのを紛《まぎ》らしているのかネ」
警官はムッとした顔つきで、
「じょ、冗談じゃありませんよ、帆村さん。経済市況で亡霊《ぼうれい》を払いのけることができるものですか。このラジオは勝手に鳴っているんです。とても騒々《そうぞう》しいので、私はむしろ停めたいのですけれど、課長からすべて現状維持とし、何ものにも手をつけるなというので、その儘《まま》にしてあるんですよ」
「えッ、現状維持を――するとラジオは昨夜《ゆうべ》から懸《か》けっ放《ぱな》しになっていたのか。しかし変だなア、昨夜ここへ来たときは、ラジオは鳴っていなかったが……」
「それはそうですよ。貴方がたのお見えになったのは、もう十時ちかくでしたものネ。ミナサン、ゴキゲンヨクオヤスミナサイマセを云ったあとですよ。私は今朝|睡《ねむ
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