とした服装をしている瘠《や》せ型の青年だった。
丈太郎は伯父の死体を見ると、ハラハラと泪《なみだ》を滾《こぼ》した。そして後をふりかえって係官の前にツカツカと進むより、ヒステリックな声で喚《わめ》きたてた。
「だ、誰が、この善良なる伯父を殺したのです。ああ僕が心配していた事が到頭《とうとう》事実になって現れたのです。だから僕は伯父さんの所から出てゆくのに気が進まなかったんです。さあ、早く犯人を逮捕して下さい」
検事と課長とは、ちょっと顔を見合せた。
「オイ丈太郎。君はなかなか芝居がうまいようだが、その手に乗るようなわれわれでないぞ」
と、大江山は一喝をくらわせた。
「なにが芝居です。そんなことを云う遑《ひま》があったら、なぜ貴方がたはもっと大局に目を濺《そそ》がないのです。貴方がたの不注意で、いま国家のために懸けがえのない人造人間研究家が殺害されたのです。国家の大なる損失です。伯父に匹敵《ひってき》する研究家が、わが国に一人でも居ると思うのですか」
これには大江山も参ってしまった。かねがね竹田博士の身辺を保護する必要のあることを考えないではなかった。しかしいろいろな手不足のため
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