か」
「しかし君、人造人間が博士を殺したことが分れば、そんな生きた人間を調べても何にもならんじゃないか」
「いや、人造人間に霊魂がない限り、これは生きた人間の仕業《しわざ》に違いありませんよ」
「うん、この点をハッキリしたいんだがネ、どうも機械というやつは、苦手《にがて》だ。この人造人間がどうして動くかということがハッキリ分るといいんだが。そうだ、帆村に調べさせよう」
「それがいいですね」
 そこで帆村が呼ばれて、この人造人間はどうして動くかを調べるように命ぜられた。
「さあ僕にも、まだ分ってはいないが、馬詰丈太郎氏は、博士の助手を永らくしていたというから、一つ訊いてみましょう」
 帆村は馬詰をつれて、人造人間の前へいった。そしてどうすれば動くかと訊《たず》ねた。
「そうですね。僕はこの新型の人造人間については知らないんだが、一つ中を開けて見てみましょう」
 そういって彼は物慣れた手つきでドライバーを手にとり、人造人間の胴中をしめつけている鉄扉《てっぴ》のネジを外《はず》していった。間もなく人造人間の膓《はらわた》が露出した。膓といっても人造人間のことだから細々《こまごま》とした機械がギッシリ詰っていて、その間を赤青黄紫と色とりどりの紐線《ひもせん》が縦横無尽に引張りまわされているのであった。なんという複雑な構造だろう。竹田博士の素晴しい脳力のほどがハッキリ窺《うかが》われるような気がした。ことに帆村たちの注意を引いたものは、下腹部に置かれた電池からの放電により、心臓部附近に小さい赤電球と青電球とがチカチカと代り番に点滅し、そして大小いくつかの歯車が、ギリギリギリと精確に廻転している光景だった。霊魂はないにしても、この機械人間の心臓も肺臓も、まさにチャンと活動しているのであった。
「――こっちが増幅器で、こっちが継電器ですよ」と馬詰はドライバーの先で機械を指《ゆびさ》した。
「これが身体を直立させるジャイロです。こっちが腕を動かす電磁石《でんじせき》装置。こっちのが脚の方です。左右二つに分れていますでしょう。首の方もついでに解剖してみましょう」
 馬詰は医学者のようにいとも無造作に、人造人間の鉄仮面を剥《は》ぎとった。
「ほら、これが口の代りになる高声器です。ほほう、この人造人間は目が見えませんよ。光電管がついていますけれど、電線が外れています。これが耳の働きをする
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