っとむきをかえて、博士の部屋にとびこんできた。
「あっ、あぶない!」
 と、博士のおどろきのこえが終るか終らないうちに、人造人間エフ氏は、まるで砲弾《ほうだん》のような速さでもって、天井へ向けてとびあがった。どーんとすごい音、そしてばらばらとおちてくる土や石塊《いしころ》。それっきり人造人間エフ氏の姿は、見えなくなってしまった。
 人造人間エフ氏は、どうしたのであろうか。いまエフ氏は、真暗《まっくら》な空を、ひゅーっとうなりごえをあげながら、砲弾のように、東の方にむかってとんでいく。
 そして、どうしたのか、ときどき身体がぱっと気味わるく光った。光るたびに、エフ氏の身体は空中でぐるぐる廻転して、まるで人間花火みたいであった。エフ氏の身体は、だんだんと、空高くのぼっていくように思われた。その当時、あれ模様の空からは、急にはげしい風が吹きはじめたが、それはエフ氏が風《かぜ》の神《かみ》に早がわりをしたかのように思われた。
 エフ氏は、はげしいいきおいで、空をとんでいく、夜中だから、まだいいようなものの、もしもこれが昼間であったとしたら、道ゆく人たちは、空を飛ぶ少年姿のエフ氏を仰いでさぞ胆《
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