だした。
「マリ子さんでしょう。わしは探偵じゃ、名探偵長の大辻という者です。えへん。正太君からたのまれて、ここまでマリ子さんをさがしにきたのです」
「それは本当ですか、あたし、マリ子よ」
「やっぱりそうだった。名探偵長がここへ来たからには、マリ子さん、安心をなさい」
「まあ、あたし、本当に助かるのかしら。あたしまた夢をみているのじゃないかしら」
そうであろう。これが本当にマリ子であれば、そう思うのもむりではない。ウラル丸の中でイワノフ博士にかどわかされ、それから兄の正太とおなじ顔かたちをした人造人間エフ氏にひきずられるようにしてずいぶん苦しい目、かなしい目にあって苦しんできたのだ。死んだ方がましだと、なんべん思ったかしれない。しかしなんとかして生きていて、病気で寝ていると同じお母さまに、一度でもいいから会いたい。それまでは、どんなことがあっても倒れまいと、よわい少女の身をまもって、こらえてきたのであった。
「もう大丈夫。わしが――この名探偵長大辻がついている以上、何が来たってもう大丈夫だ。マリ子さん、どうぞ大船《おおぶね》にのった気で安心なさい」
大辻は、マリ子に元気をつけようとお
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