けでもなく、腸《ちょう》がとびだしてくるわけでもなく、腹の中には、ぎっしりとこまかい器械が、すきまなく、つまっていた。
 イワノフ博士は、そのとき妙な眼鏡をかけると、ペンチとネジまわしをもって、人造人間の腹の中をしきりにいじりはじめた。
「ふん、どうもよくわからない。はやく直しておかないと、あとでこまるんだが……」
 といっているうちに、「あっ、この歯車がこんなに折れている。歯車の歯がぼろぼろにかけている。なぜこんなことになったんだろうか」
 博士は、ふーんと呻《うな》った。


   大辻の冒険


 ここにしばらく忘れられた一人の人物がある。それは誰だったろうか? それは外でもない。足が痛いとか、腰がだるいとかいって、ふうふう息をつきながら、だんだん遅れてしまう大辻助手だった。
 彼は一体どうしたのであろうか。
 大辻助手は、胆《きも》がつぶれるほどのたいへんな場面をみた。それは、自分の主人の帆村探偵と正太少年とが、イワノフ博士のために岩かげにおいこまれるところだった。(これは一大事。うぬ、先生たちを捕虜《ほりょ》にされてたまるものかい)と、すぐにその場にとびだそうとしたが、待てし
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