しらん」といって、博士は、こまった顔でたばこに火をつけ、しずかにけむりをくゆらせていたが、やがて膝をうって、「そうだ、いいことがある。人造人間エフ氏をよんで、話相手をさせよう。まねごとだけなんだから、エフ氏でもまにあうだろう」
博士は、たちあがった。そして壁のところへいった。博士はそこにかかっている剣道の胴当《どうあて》のようなものをおろし、元の椅子へかえってきた。これは一体なんであろうか。やはり剣道の胴当のように、たてに細い竹のきれのようなものが、胴の形に、やや円味《まるみ》をもってならんでいたが、これは竹ではなくて、或るめずらしい材料でつくったものだ。そのうえに、数えられないくらいたくさんのボタンが並んでいた。博士は、それを膝のうえにのせ、そのボタンの一つを指さきでおした。すると、そのしずかな洞穴のなかのどこかで、急にごとんごとんと重いものがうごく音がした。なんであろうか、その物音は?
エフ氏の怪
博士の目は部屋の隅にうつった。
そのとき、ぱたんと音がして、部屋の隅っこに、一つのまるい穴があいた。ごとんごとんの音は、その下からきこえてくる。――と、おもう間もなく
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