そのまえにお前を縛ってあれば、わしのつれているのが本物の正太ではないということがすぐわかってしまうじゃないか」
「ああ、なるほど、そうか。僕のかえ玉をつかうために、僕をわざと助けておいたんだな。そうとはしらず、今の今まで、大木さんをありがたい人だと思っていた僕は、ばかだった」
「ふふふふ、今ごろ気がついたか。もうおそいわい。わしがイワノフ博士としられたからには、もう帆村も正太も、ゆるしておけない。二人とも、いよいよ殺されるかくごを、きめたがいいぞ!」
 大木老人に変装しているイワノフ博士は、いよいよ悪人の本性をあらわして、すごいおどし文句を二人のまえにならべた。帆村は、崖《がけ》からおちたときの傷がいたむらしく、歯をくいしばって、じっとこらえていた。
 一体イワノフ博士は、なぜ人造人間エフ氏をつれて、日本へわたったのであろうか。たしかに彼は悪人にちがいないが、一体日本へきてなにをするつもりなのであろうか。そのへんのことは、まだ一向はっきりわかっていない。もちろんこれまでに、展覧会場にならべてあったソ連から分捕った戦車をどろどろにとかして形が分らないようにしたり、それからまた今日は、火薬
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