ってもらった切符で、にせ切符なんかじゃない。よくしらべてから、おこったがいいや」少年は、顔をまっ赤にしていった。
 船長はうなずき、切符掛から、十九号と書いた二枚の切符をとって、くらべてみた。どっちもおなじような切符だ。船長は、指さきで切符の紙の質をしらべたり、それがすむと陽《ひ》にすかしてみたり、いろいろやった。
「ふーん、こいつはへんだ。こっちの切符は本物だが、こっちの切符はにせ切符だ」
 船長は、にせ切符の方へ、赤鉛筆でしるしをつけた。
「はっきり、にせ切符だということがわかりましたか」と切符掛はにやりと笑い、そして少年の方をむくと急にこわい顔をして「おい、もうだめだぞ。船長さんが目ききをした結果、おまえの切符は、にせ切符ときまった。さあ、白状《はくじょう》せい!」
「待て」
 船長は、船員の肩をおさえた。
「えっ」
「君は、おもいちがいをしている。この少年の持っている切符の方が本物で、はじめに君がうけとっておいた十九号の切符の方がにせ切符なんだ。この少年を、にせ切符のことでうたがったのはわるかった。君もこの少年にあやまりたまえ」
 そういって、船長は少年にわびをいった。切符掛は
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