のは、どんな顔をしていたか。またどんななりをしていたか。それをいえば、お前の罪はゆるしてやる」
張は、どうも困りはてたという風に、誰かたすけてくれる人はないかと、あたりにあつまった人々の顔をみまわした。そのとき、彼の目が、正太の顔のうえにおちたとき、どうしたものか、張はああっとおどろきのこえをあげ船員の手をふりはらってにげだした。
「おい待て、張!」
船員たちは、にがしてはなるものかと張のあとをおいかけた。張は、もう死にものぐるいである。階段をごろごろとすべりおちるかとおもえば、扉にぶつかったり、椅子をひっくりかえしたり、まるで鼠のようににげまわったが、船員たちのはげしい追跡にあって、とうとう船具室のすみっこでつかまってしまった。そのときはもう、張は死骸《しがい》のようにのびていた。
船長のところへしらせがいったので、やがて彼は船具室までおりてきた。
「おい、張。なにもかも、もうすっかり白状したがいいぞ」
「ううっ――」
「白状すれば、お前の罪をゆるしてやるといっているのが、わからないか。おい、張、さっきお前は、正太という船客の顔をみて、なぜおどろいてにげだしたのだい」
「ああっ
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