もっていましらべさせています。誰が、あれを海のなかへ放りこんだか、いますぐにわかります。」
船長は、そういって、下甲板の方をちらとみた。さっき一等運転士を船内へやって、それをしらべさせているのであった。
そのとき、一等運転士の顔が、階段の下からあらわれた。そのうしろから船員の一団が、中国人のコックをつかまえて、あがってくる。
「船長。こいつです、あの煙のでるボールを海のなかへなげこんだ犯人は……」
一等運転士は、中国人のコックの張《ちょう》をゆびさした。
「なんだ、張か。お前は、なぜあのような煙のでるボールを海のなかへなげこんだのか」
「いえ、船長。わたし、悪いことない。わたし、なにもしらない」
張は、つよく首をふった。すると、後にいた船員が、張の背中をどんとなぐりつけ、
「こら、うそをいうな。お前がボールをなげこんだところを、おれはうしろからちゃんとみていたんだ。かくしてもだめだ」
「えっ、あなたみていた。それ、うそないか」
「お前こそ、大うそつきだ。よし、いわないなら、いえるようにしてやる」
と船員がコックの腕をむずとつかむと、張はすぐさま泣きごえをたて、
「ああ、わたし
前へ
次へ
全115ページ中23ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング