どいわね。イワノフ博士はまるで魔法使みたいね」
「それからどのくらいたったかしれないが、気がついてみると、僕はいつの間にか安楽椅子《あんらくいす》のうえにながながと寝ていたんだよ」
「あら、じゃ兄ちゃんは、博士からよほどひどいことをされたんだわ」
「さあ、博士からされたんだか、それとも僕と向いあっていた人造人間エフ氏からされたんだか分らないがね。とにかくそれからのちすっかり気持がわるくなって、家へ帰ってもすぐ寝床へもぐりこんじまったんだよ。お父さまには、だまっていておくれよ」
「兄ちゃんは、電気や機械の実験のことになると、すぐ夢中になるんですもの」
 二人が話に気をとられている最中、この汽船ウラル丸にだんだん近づきつつある一台の飛行機があった。それはどう考えても、日本の飛行機ではなかった。
「おや、変てこな飛行機が、この汽船をねらっているぞ」
 とつぜん二人の背後《うしろ》で、大きな声がしたので、正太とマリ子は、なにということなしにびっくりして、ふりかえった。するとそこには、いつの間に来たのか、甲板椅子のうえに、一人の老人の紳士が腰をおろしていた。その老紳士は、顔中|髭《ひげ》だらけで
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