した。が、まっくらで山道を歩くのは、たいへんむずかしそうであった。二人は、また岩窟《がんくつ》にかえり、手提電灯《てさげでんとう》をさがしてから、改めて山を下っていった。
「よかったですね。エフ氏は、間もなくつかまりますよ。博士は、どうしたんでしょうか」
「博士も、現場へいったのではないかしらん。早く電話のかけられるところまで出たいものだ。だが、大体、もう安心だろう。博士だって、老人だから、そのうちにくたびれて、警官にとっつかまるだろう」
二人は、だんだん気がかるくなったようにみえた。しかし、そんなに安心していていいのであろうか。イワノフ博士は、どうしたのであろうか。帆村と正太とは、大いそぎで山をくだっていったが、四十五分ほどのちに、ついに非常線にひっかかった。非常線にひっかかることは、二人にとって、かえって喜びであった。
帆村は、警官隊へ、これまでのことを、かいつまんで話をした。そしてイワノフ博士を捕える手配をすることが大事であると告げた。幸いなることに、その近くに警察ラジオの送受信機をもった自動車が、警戒と連絡のために来ていたので、帆村は、すぐさま、その送信機をつかって、逃げた
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