なさい」
「なにをいうか、正太。お前も、一しょにそこで長くのびているがいい」
そういうと、イワノフ博士は、正太の頤《あご》をがんとつきあげ、正太があっといって倒れるのを尻目に、すばやく、部屋をとびだした。岩窟の外は、闇であった。イワノフ博士は、懐中電灯をつけると、どんどん麓《ふもと》の方へかけだした。遠くの空が、うす赤くこげている。どうやらそれは、戸塚の方角らしい。
戦場そっくり
博士は、どんどんと山道を駈けくだっていった。老人とも見えない足早であった。
「さあ、もう日本に永くいることは、無用だ。行きがけの駄賃《だちん》というやつで、かねて計画しておいた帝都東京を焼きうちして、それからおさらばということにしよう」
イワノフ博士は、からからと笑って、なおも、走りつづけた。
こっちは、帆村探偵だった。電撃をうけて、彼は一時ひっくりかえったが、ほどなく、正気にかえった。あたりは、しーんとしずまりかえっていたのに、びっくりして、はね起きた。起きてみて、三|度《たび》びっくりだ。傍《そば》に正太少年が、長くなって倒れているではないか。
「おい正太君、しっかりしなさい」と、抱
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