目で、イワノフ博士の顔をみた。博士は、ふふんと、鼻の先で、それを笑っているようであった。帆村は、ちょっと迷った。ここでイワノフ博士が狼狽《ろうばい》してくれればいいのに、すこしもおどろいた様子がみえないのである。といって、いつまでもぐずぐずしているわけにはいかない。せっかく手に入れた操縦器をぶちこわすのは、残念だが、どうも仕方がない。帆村は、その岩窟《がんくつ》の隅にもたせてあった大きな鉄の棒をとりあげた。そして、操縦機を睨みながら、うんと大きく、ふりあげたのであった。
「あははは、そんなことをして、あとで、後悔しないがいいぞ」
 それにかまわず、帆村は、えいやッと鉄の棒をうちおろした。その一瞬、一大音響の下に目もくらむような電光が、ぱっと室内を照らした。
「あッ!」と、帆村は、おどろきのこえをあげると、その場にもだえつつ、ばったりたおれた。
「ふふふふ、それ見ろ。だから、よせといったのだ」
 博士は、せせら笑って、立ちあがった。いつの間にか、博士をしばってあった縄が、全部とけていた。おどろいたのは、正太であった。
「イワノフ博士、あなたは、悪い人だ。帆村さんを、元のようにかえしてあげ
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