せた。


   大事件!


 保土ヶ谷トンネルが爆破された! 人造人間エフ氏が、それに関係しているという! 東海道線が、不通となってしまった!
 帆村探偵はイワノフ博士を、じっと睨《にら》みつけている。彼は心の中の苦悶《くもん》をかくすことができなかった。なぜなら、帆村はその夜、東北方面の優秀な特科兵で編成された某師団が、その夜を期して西の方へ急行することを知っていたので、それを思いあわせて、たいへん心が痛んだのであった。
 その出征師団《しゅっせいしだん》は、どうするであろう。保土ヶ谷トンネルが爆破されてしまえば、列車はもちろん通じない。すると、一たん列車から下りて、あの山路を越えていかねばならないが、あの重い機械化された部隊が、あの※[#「山+険のつくり」、第3水準1−47−78]《けん》を越えていくのは、たいへんな手間でもあり、時間つぶしであった。しかし、この出征師団は、ある戦況に応ずるため、一時間でも早く目的地の大陸へつかないと、その戦地において、わが大陸軍は、大なる損害をこうむらなければならない。
 いや、保土ヶ谷トンネルの爆破だけでおわれば、まだいいのであるが、イワノフ
前へ 次へ
全115ページ中104ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング