ら、日本では、科学の発達がおくれているというのだ」と、博士は軽蔑《けいべつ》の色をみせて、「人間が物を考えるということは、脳髄《あたま》の働きだということになっているが、その脳髄の働きというのは、じつはやはり電気の作用なのだ。そしてラジオと同じように、或る短い電波となって、人間の身体の外へも出てくる。電波が出てくるんだから、それをつかまえることは、やはり受信機さえあれば、できることじゃ。もちろん、ラジオの受信機とはちがう。もっと短い電波に感ずる特別の受信機じゃ。これはエフ氏の身体の中に、とりつけてある。どうだ、おどろいたか」
「なるほど。そうして、相手の心の中がわかれば、それに従って返事をしたり、握手したり、一しょに歩いたりすることができる」
 ああ、なるほど、そういっているときだった。室内にあったラジオの受信機が、いきなり臨時ニュースを喋《しゃべ》りだした。
「東海道線が不通となりました。保土ヶ谷のトンネルが爆破されました。例の怪少年が、この事件に関係しているようです。現場《げんじょう》一帯は大警戒中ですが、戦場のようなさわぎが始まっています」
 博士と帆村は、思わず目と目とを見あわ
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