ってもらった切符で、にせ切符なんかじゃない。よくしらべてから、おこったがいいや」少年は、顔をまっ赤にしていった。
 船長はうなずき、切符掛から、十九号と書いた二枚の切符をとって、くらべてみた。どっちもおなじような切符だ。船長は、指さきで切符の紙の質をしらべたり、それがすむと陽《ひ》にすかしてみたり、いろいろやった。
「ふーん、こいつはへんだ。こっちの切符は本物だが、こっちの切符はにせ切符だ」
 船長は、にせ切符の方へ、赤鉛筆でしるしをつけた。
「はっきり、にせ切符だということがわかりましたか」と切符掛はにやりと笑い、そして少年の方をむくと急にこわい顔をして「おい、もうだめだぞ。船長さんが目ききをした結果、おまえの切符は、にせ切符ときまった。さあ、白状《はくじょう》せい!」
「待て」
 船長は、船員の肩をおさえた。
「えっ」
「君は、おもいちがいをしている。この少年の持っている切符の方が本物で、はじめに君がうけとっておいた十九号の切符の方がにせ切符なんだ。この少年を、にせ切符のことでうたがったのはわるかった。君もこの少年にあやまりたまえ」
 そういって、船長は少年にわびをいった。切符掛は、なんだかわけがわからないが、船長があやまれというので、そのあとについてぺこぺこ頭をさげた。少年は、みんなにあやまられても、別にうれしそうでもなかった。彼の顔は、さっきよりも一そう青ざめていた。


   正太の心配


 正太は船をおりた。船のなかで、行方不明になった妹マリ子のことが心配でたまらない。警察署へいって、このことを話すと、さっそくさがしてくれることになった。
 だが、正太には、警察のさがしかたが、なんだかたいへん頼《たよ》りなくおもわれた。マリ子は、一体どこへいったのであろうか。正太はあてもなく敦賀《つるが》の町をさまよってマリ子をさがしてあるいたが、なんの手がかりもなく三日の日がすぎた。
 船長は、たいへん気の毒がって、このうえは東京へいって、誰かいい探偵をたのむのがいいだろうとおしえてくれた。そして船長は、自分の名刺をつかって、紹介状をかいてくれたのであった。宛名を見ると、「帆村荘六《ほむらそうろく》どの」としてあった。
 帆村荘六? どこかで聞いたような名前だった。船長は正太をなぐさめながら、この帆村探偵は若い理学士だが、なかなかえらい男だから、きっとマリ子をさがし
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