しが見つけたときは、千吉は、青い顔をして倒れているし、上衣は血まみれだし、シャツの腕からは、傷口が見えるし……」
「傷?」
私は、そのとき始めて、脈をうつたびに、左腕がずきんずきんと痛むのに気がついた。
「あっ、左腕をやられていたのか」
腕には、誰がしてくれたのか、ちゃんと繃帯《ほうたい》がまいてあった。
そのとき私は、たいへんなことを思いだした。左手でわきの下に、しっかり抱《かか》えていた例の黒い筒は、どうしたのだろう。どこへいってしまったのだろうか。
怪《あや》しい設計図
私が、きょろきょろとあたりを見廻すものだから、ニーナはそれと気がついたらしい。
「どうしたの、千吉」
「大切な品物だ。私は黒い筒《つつ》をもっていたんだが、ニーナはそれを見なかったかね」
ニーナは、にっこり笑った。
「黒い筒ならちゃんとあるわ」
「どこに?」
「千吉の寝ている藁《わら》の下にあるわ」
「えっ、ほんとうか」
私は、むりやりに起きあがった。そして藁の下に手をいれようとしたが、左腕を傷ついている私には、ちと無理だった。ニーナは、それをみると、自分の手を入れて、黒い筒を引張《ひっぱ》
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