ゃありませんか」
技師は、熱心を面《おもて》にあらわしていった。
「まわらない歯車が二個もあったか。どうしたわけだろう」
と、大尉は私の顔を、じろりと睨《にら》んだ。
だが、何を、私が知っているものか。
「あらゆる号令は、かけてみたつもりだが、はて、へんだな」
と、大尉は、なおも解《げ》せぬ面持《おももち》で、広い額を、とんとんと拳《こぶし》で叩いた。
「なぜだろうな、セン。説明したまえ」
「私が、なにを知っているものですか。あの筒の中に、こんなすばらしい設計図が入っていると知ったら、私は、あんなところにぐずぐずしていませんよ」
「ふしぎだ。が、まあ今日のところは、これでいいだろう」
と、フリッツ大尉は、試験の終了《しゅうりょう》を宣《せん》したのであった。
私たちは、檻を開いて、外に出たが、そのとき大尉は、私に向い、
「どうだね、セン。君は、捕虜《ほりょ》として土木工事場《どぼくこうじば》で、まっ黒になって働きたいか、それとも、この工場で、見習技師《みならいぎし》として、楽に暮したいか」
と、たずねた。
「もちろん、楽な方がいいですなあ」
と、私は即座《そくざ》に答え
前へ
次へ
全42ページ中23ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング