器械の設計図であった。急いで、一枚一枚、繰《くく》っていくうちに、私は、その青写真が、どんな器械をあらわしているかについて、知ることが出来た。
「おお、これは人造人間《じんぞうにんげん》の設計図だ!」
私は、おどろきのこえをあげた。
人造人間! モール博士が、人造人間の研究をしていたことを知ったのは、今が始めてであった。博士が、自分の生命をうちこんで完成した器械というのは、人造人間の発明のことであったか。
「ふうん、大したものだ」
私は、むさぼるように、十八枚からなるその設計図を、いくどもくりかえして眺《なが》め入った。じつに、巧妙をきわめた設計図である。しかも、この人造人間は、新兵器として作られてあることが、分ってきて、私は二重《にじゅう》におどろかされた。モール博士は、ベルギーの国防のために、このような大発明を完成したのであろうが、ドイツ軍のキャタピラにふみにじられた今となっては、手おくれの形となってしまったことを、私は博士のために気の毒にもおもい、またベルギー国のためにも、惜しんだのであった。
「千吉。もういいでしょう。その図面を、早くおしまいなさいな」
と、ニーナが、私
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