血達磨《ちだるま》のようになった男です。なるほどこの肉も血も、珠江夫人のではなかった。貴下の言うとおりにネ。血型《けっけい》O型の人肉は誰だったのでしょう。それは貴下の家から程近い墓場の下に睡っていた女のものでした。峰雪乃《みねゆきの》――ご存知ですか、この名前を。たった今、その土饅頭を崩《くず》して棺桶の中を開いて来ましたが、中は全く空っぽです。貴下はあの晩、一度工場の門を出て墓場へゆき、闇《やみ》に紛《まぎ》れてこの仏《ほとけ》を掘りだし、工場へ引返したのです。そして人肉散華《じんにくさんげ》をやりました。墓の方は時間が無かったために、壊した土饅頭を作り直す暇がなく、上に土だけ被《かぶ》せておいたところを、はからずも通りかかった一人の男が見ました。つまりこの僕がネ」
髭男はニヤリと笑った。
「全くお気の毒でしたネ。人肉散華から再び帰って、貴下は土饅頭を作り、トラックの跡を消したが、それはもう遅すぎました。なぜこんなことをやったか。貴下はその夜かねての手筈で夫人に姿を隠させて、丁度《ちょうど》夫人が失踪したようにみせたのです。そして万事は赤沢博士に嫌疑がかかり、そしていい加減なとこ
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